「何のためにITILを導入するのか?」
ITILを簡単に説明すると、自分たちにとってIT運用のあるべき姿を目指し実践していくことです。何かツールを買ってきたり、コンサルによる手法の導入ではなく、実践したり参考にすべきITサービス運用者のための成功事例集です。そのため、導入して終わりではなく「会社の規模」「業種」「ビジネス形態」「ITサービス部門の状況」に応じてPDCAによる改善をしていく必要があります。
ITILとは何か?
ITILは企業活動であるIT運用をITサービスとして実践するための成功事例を集めた書籍のことです。 中心となるのが日常的な運用管理作業を中心としたサービスサポート(青本)と中長期的な運用管理方針、計画立案のためのサービスデリバリ(赤本)の2冊の書籍を指します。 この2つがITILの中心となり、効果的なITサービスマネジメントの仕組みを構築するためにはプロセスと人の教育、仕組みを支える管理ツールをバランス良く活用する必要があります。
このようにITILは、実際の現場でITサービスを提供するときに適用され、過去の効果的なITサービス管理・運営方法をまとめたものであると理解することができます。
ITILは規格ではない点に注意してください。ITILにすべて準拠した環境を構築しなければならないものではありません。組織の規模、状況、ビジネス形態、ITニーズに合わせて活用するための参考書と考えてください。
ITILの基本の考え方
ITILとはITサービスのための成功事例集だけではなく、成功事例から学んだ考え方や失敗しないコツなどが説明されています。
例えば、日常的な業務に「インシデント管理」があります。
インシデント管理のインシデントの定義
サービスを阻害する、またはサービスの質を低下させる、あるいはその可能性があるイベント。と定義しています。
インシデント管理の目標
「可能な限り迅速に、通常のITサービスを回復させることです。ビジネスへの悪影響を最小限に抑えて、品質と可用性のサービスレベルを最高の状態に維持すること」としています。
サービスサポートのインシデント管理の解説を読むと、ITサービスを提供する側と利用するビジネス部門において障害発生時のインシデントに対する対処について共有しておく必要があることがわかります。また、インシデント発生時に重視するポイントとして、一刻も早く通常のビジネス活動が出来るように復旧させることが重要になります。これはインシデントが発生した原因追及やITシステムの不具合を直すことだとは限らないことを意味します。
ITILによる「あるべき姿のIT運用」の考察
ITサービスはあなたの会社の業務を日々支えています。会社の基幹システムがダウンすれば業務が停止してしまいます。インターネットによる受発注システムが停止しても同じく、サービス(自社の業務)の停止に繋がります。 このような事象より、ITサービスはビジネスにとって欠かせない重要な役割である反面、大きなリスクでもあります。
このリスクを最小限にするための活動としてITILがあります。 多くの会社が取り組み、有用性が証明されているITILを活用することで自社の要求に合ったあるべき姿のIT運用が可能になります。自社にあったあるべき姿とは「ビジネス要件に基づき、コストに見合った、日々改善されるIT運用」です。ITILの忘れてはならない大切なポイントがあります。 「IT運用改善のPDCAサイクルが回り続け、人材が育ち、運用業務やプロセスが標準化される」
情報イステムやITサービスにとって数多くのヒントを提供してくれるITILを活用しましょう。
参考文献
- ITIL入門(ISBN-13: 978-4820118008)
- 強い会社はこうして作られる! ITIL実践の鉄則(ISBN-13: 978-4774131252)